タイトル もっと優しい旅への勉強会
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2005年11月定例会
「お洒落して、お出掛けしましょう」

【日時】  11月17日(木)19:00~21:00
【講師】 講師 服飾デザイナー 戸高 禮子(とだか れいこ) 氏

戸高先生は、ジバンシー・オートクチュールのアトリエにて製作担当、遠藤周作主幹・劇団樹座『オペラ蝶々夫人(劇中劇椿姫)』全衣装担当、福祉機器展の中で6年間「北九州市ふれあいファッションショー(障害者・高齢者)」、NEDOの障害者衣服の実態調査と研究開発2年間(特許出願中)、湯布院亀の井別荘他での20数回に及び個展活動等々、幅広い活動をされていらっしゃいます。

現在は、東京医科歯科大学大学院講師、別府溝部学院短期大学、大分県立野津高校福祉科の講師を勤められる他に、障害者用衣服リフォーム・ボランティアの服私研究会主幹、大分市戸次本町修景整備専門委員会委員、大分県緊急行財政改革推進委員会委員、大分放送局番組審議会委員等々を勤められ、厚生労働大臣認定服飾一級技能士、文部科学省認定生涯学習2級インストラクターをお持ちであり、大分合同新聞社発行月刊ミックス誌に『戸高禮子の服は着る薬』を連載中であり、その他にも数々の活動をされていらっしゃいます。

湯布院観光の先駆者「玉の湯」の溝口薫平氏と大分放送番組審議会委員もされており、まさに大分と東京をまたにかけて活躍をなさっている先生です。医師と連携を取り、導尿患者さんやオストメイトの患者さん、障害をお持ちの方々や高齢者の方が着易く、着心地の良い、インナーからアウターウエアー等を考案されたり、便利グッズ等も開発されています。また、車イスでもおしゃれで機能的な服やウエディングドレスまで製作をなさっていらっしゃいます。

障害により着られなくなった着物を同じ用途として着られる様に和服のリフォームなど、言い切れないほどのご活躍ぶりです。只今、大分県の山間に「種から栽培する藍の染色活動」としてアトリエを作っていらっしゃいます。

いつも優しい笑顔を絶やさない戸高先生からは、講演中ずっと、その優しいお人柄がにじみ出ていらっしゃいました。魔法のようなアイデアの源は先生の優しさの泉から湧き出るアイデアなのだと思いました。

戸高先生のお話

ご紹介いただきました戸高禮子と申します。本日は重岡先生(当会プログラム委員)と一緒に、博多経由で大分から上京してまいりました。
今日は「お洒落をして、出掛けましょう」というテーマで、私がライフワークにしていることと、今まで作ってきたものをスライドを使ってお話しさせていただきます。

私は重岡先生とは同業者の服飾デザイナーで、文化服装学院の通信教育の指導員をしております。九州ブロックというものがあり、重岡先生は福岡県の、私は大分県の代表をさせていただいております。
去年の今頃、九州支部の地区研修会が大分で行われた際に、湯布院に九州、沖縄の先生方と一緒に泊まりました。その時、重岡先生と「完全バリアフリー」と言いながら、そうでもなかったホテルに同室させていただき、今日もこのあとは京王プラザホテルの同じ部屋に泊まる予定です。
今日はこれまで開発してきたものをご紹介して見ていただきながらお話しさせていただき、その後にご質問などにお答えできることがあればお答えしたいと思っております。

『服は着る薬』

『服は着る薬』は、私がずっとテーマとしているものです。新聞の掲載ですとか、展示会、地元の雑誌に連載しているものにも使っております。障害とか病気とは、洋服を着ることではそれらを治すことはできないのですが、着た瞬間から変わるのですね。実際に1級の障害者手帳をお持ちのリウマチの方で、ほとんど寝たきりであった方が、痛み止めを飲まなくなって、今はお仕事ができるようになりました。メンタルな部分でカンフル剤になるということを、私は洋服を作ってきて数多く体験してきました。

『創衣工夫と服作用』は誤植ではありません。私の造語です。ハンディに応じたリフォームや、工夫をすることで、洋服が着脱しやすくなったり、又自分一人で着ることができるようになったり、おしゃれになったり、人から褒められるようになったりすることで、洋服を着てどんどん外に出掛けてゆくようになります。

作品の実例

今年で6回目を迎えた北九州市の障害者のファッションショーには、初回から関わらせてもらっております。今年は基調講演だけさせていただきました。北九州市は6年目を迎えたのですが、一昨年福岡市が初めて同様にファッションショーを行いました際には、全部作らせていただきました。これからご覧頂く作品を10日くらいの期間に、全部1人で作りました。1回目にモデルさんにお会いした時に何を着たいかをお聞きし、2回目にお会いした時に仮縫いをして、3回目はショーの本番当日でした。

スライド最初のウェディング・ドレスを着た女性は脊損(脊髄損傷)の方です。脊損の方は下半身がマヒされていらっしゃる方が多いのですが、指は比較的に使うことができます。この方の着ているウェディング・ドレスは2部式になっており、上下に分けて作ってありあます。(外見からはワンピースに見える) キャミソールになっているものは、脇の所でファスナーで全部オープンになり、全て横に広がるように作ってあります。そのようにしておかなければ、車イスを使っている方にとっては着ることはできても、脱ぐことができなくなってしまうからです。スカートのファスナーは、普通20cm程ですけれども、もっと深くし、そしてマグネットでカチッと止まるようにしてあります。


次の方は福岡市の保健所の所長さんで障害はもっていらっしゃいません。この方から突然電話をいただきまして、あなたのファッションショーをしますと言われました。見た事も聞いた事もない方から電話がありまして、自分のファッションショーをすることになりました(笑)。私は、ステージに障害のある方だけに出ていただくファッションショーは私流ではありません。本来は同じ生地で、同じデザインのものを、健常者と障害者が一緒にステージに出て、まったく同じデザインなのですが、障害のある方のここに工夫がしてありますよということが、本当のユニバーサルではないかというお話しをしました所、この所長さんが「はい、分かりました。それでは私も出ましょう」ということで、健常な方ですが、高齢者、障害を持った方と一緒に出ていただきました。

次は振袖です。新品の振袖で、刺繍をしてありますが金箔です。その新品の振袖でドレスを作りました。この方はリウマチです。リウマチを発症される前に着ていらした小紋の着物をドレスにしたいということで、ロングドレスを作らせていただきました。指がちょっと変形していらっしゃいますので、その手をペプラムという布で少し覆うような形にしました。襟元のブルーのスカーフは実は帯揚げでした。着物をリフォームする際、着物の小物には和装の小物が合います。ドレスを着て草履を履く人はいらっしゃいません。そもそも草履を履くことができないのでリフォームする訳ですが、草履以外の物は全て着物でリフォームしたものです。小物は全部使うことができます。例えば、ビーズでできた帯締めなどをベルトにしてもすごくマッチします。


次のスライド、左の男性は頚損(頚髄損傷)の方です。頚損の方は指がマヒしていらっしゃいますので、自分で脱ぎ着することができません。彼の場合は、もっと派手なものでもよかったらしいのですが、友達の結婚式に着てゆくものが欲しいということで、これは実は綿100%でストレッチ素材でできています。ストレッチ素材といいますのは要するにゴムです。生ゴムが入っております。最近は皆さんも伸びる素材のものをお召しになることが多いと思うのですが、ポリウレタンは、3~5%入っていれば、かなり伸縮がききます。洋服の素材表示にポリウレタンと書いてありましたらそれはストレッチ素材です。彼の作品も綿のストレッチ素材で、ボタンを着けているように見えますが、彼は指がマヒしていますので、実はマグネットです。



左の写真は彼のスーツを広げた状態のものなのですが、一番ポイントになるのは、前後差が10cmになっている点です。男性の背広の素材は芯のしっかりしたものを使っていますので、カチッとしている訳なのですが、それで車イスに座ると、前の所がボコッと折れてしまうのです。そのために上着の前を後ろよりも10cm短くしてあります。ですから座った状態でも邪魔にならないのです。
ラグラン袖とありますが、これは肩の先端で切り切りかえるのではなく、首の根元から脇の下に向かって斜めに切りかえてある袖のことで、リウマチの方、パーキンソンの方、片マヒの方など、既製服では合わないという方で1人で着脱が出来ない方は、このラグラン袖にすると解消されます。ただし、リウマチの方は指が変形して物を持つ時に指が痛いので、軽いものでなければいけないということはあります。
なぜラグラン袖がいいかといいますと、洋裁が得意な方はお分かりになると思うのですが、実は既成のものが着にくいといいますのは、袖を通す時なのです。1本目の腕はいいのですが、2本目の腕を通す時に洋服が突っ張って通しにくくなります。なぜかと言いますと、腕は普段は下がっていっていますのでそのようにデザインされています。ということは腕と体の間には空気に触れる面積がないことになりますね。しかし、腕を真横に上に上げていきますと、脇の下に葉っぱの形をした面積が必要となるのです。既製服はこの葉っぱの部分が足されていないのでひっぱられる形になり着にくい訳です。ラグラン袖にしますと着脱が困難な方の場合は解決されることになります。

次に彼のズボンですが、実は彼は導尿しています。自己導尿についてはご存知かと思いますが、下半身がマヒしていますから排尿障害がありますので、膀胱に尿が溜まってもトイレに行きたいという感覚がない方は、時間が来るごとにカテーテルを自分で差し込んで採尿パックで受けて捨てる作業を1日に何度か行わなければなりません。その時にズボンのファスナーが短いと、作業がしにくいわけです。これは片マヒになって寝たきりになった方も同じことになります。尿瓶で取ってあげるにしても開口部が浅いと作業がしにくい訳です。

実はこのズボンは、後ろの方までファスナーが開くようになっています。ですから車イスに座った状態であっても自分で簡単に導尿ができます。ウェスト部分はマグネットボタンを使ってますが、必ず開口部に紐がついています。紐に腕を掛けて下げてファスナーを開けて導尿できるようにしてあります。開口部は深くして、ジョイントの所をマグネットにして、紐を必ずつけることです。

この女性の方は車イスダンスをされる方です。お花をたくさん着けてもらいたいと云う事でした。側湾にかなりの障害をお持ちの方でしたので、左右非対象のデザインにしました。これも上下2部式になっています。スカートの上の部分の裾の所がちょっと広がるペプラムにしてあります。これで自分でもお花を見ることができます。

この方は脳腫瘍を患って10年目の方です。やはりマヒがありまして、時間がくる毎に導尿しなければなりません。彼は今お勤めをしていますので、ユリドームというカテーテルを装着しています。  
ユリドームとはどういうものかといいますと、留置カテーテルといい、よくバルーンといいますが、膀胱の中まで入れ、10ccくらいの空気を入れてあげます。空気を入れると膀胱の所で止まり固定され、その先から尿が出てきて採尿パックに溜まる訳です。その溜まったものを時間がきたら捨てることをしているのです。彼の場合、何に困っているかといいますと、ユリドームの素材はスキンと同じようなものですが、ペニスの根元に巻いておくのですが、はずれてしまうことが多いそうです。日本ではコンビーンという製品を輸入して使っているものしかないのです。彼の場合これがはずれて尿漏れがあると臭いがあるのではないかと職場でとても気になっています。彼が自分で考えた方法は、根元に着けたユリドームが外れないように、氷嚢を買ってきて切り取ったものを根元にまいてかぶせ、かぶせた所にユリドームがあり、採尿パックで尿を受けるというものなのですが、ユリドームにも何百円かかかり、その上に氷嚢も買わなければなりません。いくらお洒落な服をつくっても、排泄の問題がクリアできなければお洒落をして出かけることができないことになるのです。

これは男性の場合ですが、女性の場合も導尿しなければならないのですが、バラエティに富んだ商品というのが中々ないのですね。専門的になってもバラエティに富んでなくて、高いという問題がありますので、このような商品開発もどんどんやっていただかないといけないと思っております。
実はほとんどの方がこの採尿パックを足の内側にマジックテープやガーゼなどでしばり付けています。そうするとしばり付けた所は血行障害が起きるのでかゆいのです。これをどうにかして解消してあげたいと思いまして、リフォームしてズボンの内側にポケットを作ってみました。筒状になったズボンの内側にポケットを作るというのは、技術的にもとても大変なことなのです。ポケットを作ってから筒状にした方が簡単なので、ズボンをリフォームするのであれば、最初からポケットのついたものを作ってあげた方が良いです。車イスに乗った状態でこれを出し入れする為には、ポケットがあればよいという簡単なものでもないのですね。実際にやってみますと理解することができます。この作品はズボンの外側をファスナーで開閉します。内側にポケットがあるのですが、膝が曲がった状態で入れるということになりますと、ズボンは脱いだ状態でないと入らないことになります。ですから横から入れることを考えますと、ポケットの脇もファスナーで開かないと入らないことになります。採尿パックを入れて、パックにボタンホールが必ず着いていますので、ボタンで固定して沈み込まないようにポケットにボタンをつけておきます。このような特別な工夫をしなければいけないことになります。
右の写真はズボンのポケットを開けた状態で採尿パックが入っている状態です。右下は採尿パックを入れる時に、ポケットの脇のファスナーを明けている状態の写真です。

次の写真はちょっと話がそれますが、重岡さんと一緒に泊まった完全バリアフリーといわれている湯布院のホテルのものです。車イスの重岡さんはスイッチに手が届かないのです。ホテルの部屋に入って、右手にトイレがありました。しかし車イスの方がこのトイレを開けて入る為には、玄関のドアを開けて自分の身体を部屋の外に出さないとトイレのドアが開かないのです。しかも開け口が逆についていますので、手が届かない訳で、重岡さんが手が届かないと叫んでいる写真です(大笑い)。それにトイレに座ってみますと、一般の方でさえもトイレットペーパーに手が届かない写真です。

次は視覚障害者の方に頼まれてお洋服を作ったものです。とっさにお通夜とか、お葬式などに出かけるときに黒の洋服を着ないといけないという時に、テプラ、これは文房具店に売っていますが、文字が浮き出るプラスチックテープを自分で作れるもので、目の不自由なかたはそのテープを電子レンジや冷蔵庫に貼って活用されています。そのテプラで〝礼ジャケ〟などとご本人が判るようにテープを作ります。テプラのテープはプラスチックですから、その周りにリボンをつけてそれをまつって礼服につけます。ジャケットに直接縫い付けると表に浮き出てしまいますので、ご本人が判るように配慮してつけます。

次は紐ボタンの写真ですが、話しますと長くなりますので今日は手短にお話しします。湯布院の亀の井別荘というところでずっと個展を開いております。10年以上前のバブルがはじける寸前の時は、個展を開催しますと、展示作品が売れて売れてしょうがないほどで1日に4~50万円も売れてしまったことがあります。そんな売るものがない時に「戸高さんもう売るものはないの」と言われました。本当にいい時代だったのですね(笑)。そんな時、夜に1枚でも2枚でも縫って個展の会場に持ってゆかなければならないのですが、ボタン屋さんは夜は開いていませんので、紐で急遽作ったのがこの紐ボタンです。
ループ状になっている所を切ってほぐし、片方をタマ結びにして、真ん中を、ボタンを着けるところに縫い付けて、ボタンホールに通してデザインとしてやっていたのです。ところがこれがリウマチですとか、パーキンソンの方がこれを着る時に、ボタンホールから指を入れたり、リーチャーを入れて、ループの所を引っぱると簡単に着ることができることがわかったのです。着る時以上に脱ぐ時は簡単で、一瞬の内にパラパラパラと脱げるのです。これが紐ボタンです。

次は精神発育遅滞の障害児の方の体操着です。写真の方は今では成人なさってますが、この時は中学生でした。身長が120cm程の女の子でした。障害児の方は、リウマチの方もそうなんですが、体温調節がとても苦手なのです。そのために冬は冷たくなり、夏は体温が40度近くに上がることがあります。養護学校に行くためにオムツをしていますので、養護学校の先生がトイレに連れて行くと、衣服を全部脱がせ、それで排泄させるのです。冬の寒い時でもそうするのです。

この作品は、その子が修学旅行に参加するにあたり、お母様が心配なさって頼みに来られました。その子供さんはオムツを取り出すだけではなく、運動場に出て行って真っ裸になったり、性器にいつも手がいってしまう子供さんでしたので、お母様は修学旅行にひとりで出すのが心配だということで、とにかく体の中に手が入らない服を作ってもらいたいということでした。
常に体操服を着用していましたので、体操服の上下をつなげて作ったものです。後ろ部分をL字に開けることができることで、そのままトイレに座ると大も小も用が足せるものです。これは認知症の方もこの子供さんと共通点が一緒であるといえます。いまでは鍵付きの抑制服は、ご家族の了承がないとつくれないのですが、以前はつなぎはだめとか言われていました。しかし、このようにちょっとした工夫で、上下着ているように見えて便利な服というものがありますので、衣服はつなぎはだめというだけではなく、ご本人が着脱がスムースにでき、日常の生活の中で便利なものであればいいのではないかと思います。
膝(ひざ)よりも上、肘(ひじ)よりも上が細い人はいません。ですから膝より下の寸法でズボンを作り、お袖も肘より下の寸法がぎりぎりのサイズで作りますと、それより上には行きません。そのように計って作れば、手を入れてオムツを取り出せるはずがないのです。

次の女性は車イスを作っている女性の木工職人です。この方も大分のユニバーサルデザイン展に作品を出品されています。手作りで車イスを作りますが、障害児の場合、側湾の部分を作るのが非常に難しく厳しいのです。ウレタンをナイフで削って手作りで作り上げます。障害のある方のものを作る場合は、カルテのように症状から何から全部聞き取ってオンリーワンの車イスを作ってゆかなければならず、マスを対象に大量生産したものでは絶対にフィットしないのです。

次の写真は、別府の短期大学の介護福祉科の学生に毎年洋服を作らせているものです。私は前期だけ教えているのですが、その間だけでもかなりの作品ができ上がります。しかも実習室に移動しないで教室ですべて手作業でさせます。私は学生に文化服装学院のやり方も教えますし、ジバンシーのオートクチュールにもいましたので、オートクチュールのやり方も教えます。厚生労働大臣認定の技能士のやり方も教えますが、全部手作りをさせるのです。

写真左にプラスチックの輪っかがあります。これは300円位で市販されています。これをウエストの所にずっと通してゆくのです。一枚の布になったものをウエストの所に輪っかを通しただけのものです。雨の日に車イスの方の足元が濡れるのを防ぐために作ったものです。実はこれは100円均一で売っている傘をばらして作ったものです。使わなくなった傘をリメイクして使うこともあります。この作品は私も着物を着たときにすごく便利かなと思いますし、車の乗り降りの時も便利だと思います。これを厚いバスタオルで作ると車イスの方がお風呂あがりに、車イスの上にバスタオルを敷いて、これを上からかぶせて使えばすごく便利だと思います。私は家ではエプロンとして使っています。

次は女性用の自己導尿のショーツです。日本では初めてだそうですが、現在特許申請を出しております。見たことがある方もいらっしゃるかも知れませんが、導尿なさっているショーツといいますのは、どこのメーカーも作っていませんし市販もされていません。ですからこれはリメイクしているものです。作業療法の先生などが、産褥ショーツをカットし布を足してマジックテープを付けて紐をつけて、リハビリの時に作っているのが現状です。
そうであれば初めから作ったらどうだろうとかと思ってつくったのがスライドに写っている作品です。この完成品になるまでに、かなりの時間と費用を費やしています。モデファイ(修正、加減)といいまして、細かい所を実際に知っている人に聞きながら作りました。

一番最初に試作したものがこれ(手元にある作品を提示する)です。最終的に出来上がった作品と変わっていない所はどこかといいますと、ウエストの天ゴムといいますが、縫い目がありません。褥創、床ずれ防止です。それと素材(布)も変わっていません。1枚仕立てです。これも褥創のことを考えてそうしました。また防水布を貼っております。
それでは大きく変わった所は何かといいますと、マジックテープの面の所と紐の部分です。自己導尿をなさっている方は、ほとんど脊損の方とか頚損の方で下半身がマヒしている方です。自分でトイレはもよおせない方で、レベルは様々です。大は小を兼ねるというわけではないのですが、頚損の方のレベル、指がマヒされている方に合わせて作った作品の方が、障害が軽い方にも使いやすいということです。リウマチの方も同様ですが、着脱するために自分で指をひっかける紐ですが、ズボンやショーツに付けていたのですが、必要ないということで後でなくしました。
次はマジックテープの音です。マジックテープを剥がす時の音がとても嫌だとおっしゃるのです。これらの作品では、市販されている雄と雌の一般的なマジックテープを使っています。

次に作った改良作は紐のないものです。天ゴム、一枚仕立て、防水布がついているものです。履くときにはこれでいいということで紐を除いたのですが、実はこのショーツを使用するためには、それにあった内股開閉できるズボンでなければなりません。しかし、開けた時の反動で戻ってしまうことがあり、頚損の方は感覚がマヒしていますので、持って押さえておくことができません。開けたあとに自分でカテーテルを差し込むのですが、見えませんので手鏡を使います。
話がちょっとはずれますが、ほとんどの公衆トイレは間接照明です。入り組んだ所に差し込む訳ですから見えにくいのです。大分市の都市計画課に行きまして、車イス用のトイレは直接照明にしてくださいと話しをしました。当事者は自分の事ですので、ご自身からはなかなか言いにくく、言いに行きません。
話しを戻しますが、鏡を使って導尿します。しかしどこに自分の指をかけたかわからないのです。紐の位置が良くないとわかりましたので位置を替えました。マジックテープの音を解消するために、あまり音がしないものに替えました。

三つ目に改修したものは、横に付けた紐です。これは親指を掛けられるようにつけたのです。それが現在の完成品です。これを使うために必要なズボンが次のスライドに写っているズボンです。ちょっと写真ではわかりにくいのですが、自転車競技用のズボンと同じ様に立体裁断で作っています。車イスからベッド、タクシーから車イスと移乗させる時に、サイドの部分をグッと持ち上げられるようになっています。
その時に介助なさる方も爪が折れたりして大変ですし、使いやすいように、指がかかるタグをつけてあります。ズボンの裾の足首にベルト通しのようなものをつけてあります。こうすると脱ぐ時に親指をかければひっくり返えらないような工夫をしてあります。
車イスに座っているとどうしても後ろがあいて背中が見えてしまいやすいので、前を5cm短く、後ろを5cm長く作って前後10cmの差をつけてあります。そうしますとゴワゴワもしませんし、背中も寒くありません。

本当は車イスを使っている方がはいているズボンも、健常の方がはいてもカッコいいズボンであってほしいなと私は思っています。車イスの方もきっとそのズボンをはいて、走ったり、歩いたりする姿を想像していると思うのですね。そうであれば健常者が着てカッコいいものであって欲しいので、ウエストに10cmリブ編みの(綿の)伸縮するものをつけています。ですから、着たときにハイウエストになります。車イスに座ると後ろの方が下がってこないように工夫をしました。

次は男性用の自己導尿をなさっている方のトランクスです。頚損の方は指がマヒしていて、ほとんど使えない方が多いので、頚損レベルに合わせてすべて作っています。開口部を深くしマジックテープを使い、そして紐をつけています。導尿なさっている男性は、実際はトランクスは履かないとおっしゃる方が多いです。何故かと言いますと、下半身マヒなさっている方は、便は摘便といいまして週に2回ほど出してもらいますし、導尿しておりますのでトランクスをほとんど汚すことがないのです。面倒だということと、リフォームされていないものを履いている方が多いので、自己導尿用トランクスは履かないということです。ですから今は男性用トランクスはあまり作っておりません。通常はロットは1万枚単位なのですが、奈良にご協力いただいている会社がありますので、100枚単位でMとLサイズを作っております。それをNPOの脊損で看護師の方に全て託しております。彼女が1,800円で売るようにしています。男性用トランクスは余り需要がありませんので作っておらず、在庫も現在は持っておりません。

今日は『お洒落をして、出掛けよう』というテーマでしたが、今日、重岡先生と電動車イスで福岡から飛行機で上京した際、日本航空の男性の方が手伝ってくれましたので助かったのですが、例えば車イスの方が海外旅行の際にトイレを使う時、自動車に乗っている時など、飛行機の中でトイレに簡単に行けない時など困ることがあります。そんな時、この製品はもともと赤ちゃん用のもので、脊損の看護師の方からいつも持ち歩いていると教えてもらったものです。お小水であればこれに受けてぴたっと閉めると尿が固まり、臭いの心配もないそうです。持ち歩くグッズとしていいかなと思いましてご紹介しました。

お洒落とは?

この辺から『お洒落』のお話しにします。このグリーンの作品は訪問着の着物です。リウマチの方は特に、帯を締めることが出来ないとか、腰にコルセットを着けていらっしゃるなどの理由から、着物を着て出かけることができません。そのためセレモニーに出席できないという方は結構いらっしゃいます。
着物を着たいが足袋が履けないとか、スーツを買っても上着は合うが下が合わないなどということがあります。本来であれば着物を着てゆくべき所に、着る事ができない方が、着物をリメイクをして着てゆかれると、普通に出席されている方以上に注目され、褒められて嬉しかったとすごく喜ばれます。この写真は留袖をロングドレスにリメイクした作品で、家紋が入っていますね。
着物の前身ごろでドレス前面を作り、後ろ身ごろでドレスの後ろ面を作ります。袖の部分で袖を作りますので、必ず右左家紋がそのまま付いていることになります。紋があるということは格式が高いということになります。お洒落をして行くということは、御謝礼ということでひとつの礼儀です。わたしは今日このような気持ちで出席しましたと、何も言わなくても判ってもらえます。
 留袖は身内の時だけですけれども、ドレスにしてしまえば、例えばパーティーにも着てゆけますし、海外旅行に行った時にお食事の時にちょっと着て行くことで、自分もとても嬉しいですし、まわりの方も気持ちがいいのではないかと思います。

次の作品は、留袖でリメイクしたコートドレスです。コートドレスといいますのは、コートにもなり、ワンピースにもなります。このように作っておきますと、本当に気軽に着て行くことが出来ます。リウマチやパーキンソンなどの病気を患って得をするということはないと思いますが、ハンディがあったために普通の人と同じものが着られないために、人とは違ったお洒落が出来るということがあるのだと思います。

これは兵児帯(へこおび)です。男性が着物を着る時に締める帯です。生地はシルクです。とても丈夫で幅が広く出来ています。しぼりの所を広げると1枚の布になりますので、それを1週間程吊っておき、ちぢみとか伸びを見ておきます。それからハサミを入れて作ってゆきます。


次はラグラン袖です。背広の歴史に『製図改革』とありますが、政治改革ではなく、製図改革という私の造語です。男性の背広の歴史は400年程あり、その間背広はまったく変わっておりません。皆さんほとんどテイラード・カラー(襟)の背広を着ていらっしゃいます。脳梗塞などで片マヒになりますと、着たり脱いだりすることが大変です。特に社長さんや会長さんで、もう一度会社に復帰したいという方に、「社長さん、もうネクタイ締めて行く必要ないですよ、マオ・カラーを着たらいかがですか」と私はお話しします。マオ・カラーとは毛沢東さんが着ていた立て襟の上着です。あのマオ・カラーのジャケットを着るとカッターシャツもネクタイも必要ありませんよね。ですから今はマオ・カラーですよと勧めています。ほとんどラグランで作ってあります。背広をラグランにすると片マヒの方も簡単に自分で着脱ができます。まだ見たことはありませんが、ラグラン袖のカッターシャツがあるととても便利です。

パーキンソンの方もリウマチの方も、大変真面目で几帳面な方が多く見受けられます。パーキンソンを患っていらっしゃっても、それでも自分でカッターシャツを着てネクタイを締めます。1時間以上かかるのです。ですからボタンをすべて取ってマジックテープにしてあげて、その上にボタンをつけてあげます。そうしますとカッターシャツを普通に着ているように見えます。そのようにリメイクをすることができます。そしてラグラン袖のジャケットを着ることによって、日頃と変わらない格好でお仕事に出かけることができるようになります。

車イスの方が旅行する時に、自分の荷物をどうするかということは大きい問題です。このバッグは上と下に別れています。車イスの方は普通リュックなどを後ろに掛けている方が多いと思うのですが、旅行になりますともう一つバッグが必要になってきますよね。ですけれどもバッグを2つ後ろに掛けることができません。その時には1個自分がかつぎます。そのかわりにリュックの縦の長さを車イスの背もたれを考えて作っていかないといけません。背もたれが高い場合は枕のような形にしてリュックを背負い、そしてリュックの下に掛けるものも、車イスの後ろの形状は様々ですので、それらの形状に合わせて、車イスの車輪の所でバッグが傷まないように測って作っていきます。


これは上のリュックです。ファスナーがついていまして、マグネットでボタンが開閉する工夫がなされています。この作品は若い女性の方から頼まれて作った下に吊るして受けるようになっているバッグです。次のバッグは中に入れるものです。全てマグネット開閉にしてあります。それと面ファスナーです。右のマグネットはループを付けています。必ず指が掛かりやすいものをつけるようにしています。指がかかれば頚損の方も自分で簡単に使うことができます。

次の紐の作品は、細い方は細いなりに、太い方は太いなりに、どこでも指が入るように3段階にしてあり、開き閉めができるように工夫してあります。

先程ベルクロについてお話しましたが、マジックテープといいますのは雄と雌があり、絡んでくっつく事ができる訳です。ベルクロといいますのは、例えばこの中に辞書を入れても絶対に落ちません。ベルクロの特徴は、雄と雌が一緒なのです。ですからマジックテープは雄同士あるいは雌同士はくっつきませんが、ベルクロはこれ一種類でくっつきます。このベルクロは横のひっぱりにとても強いので、私はリウマチの方のためにこれでエプロンを作ることが多いです。また、はがすのが簡単な事も特徴のひとつです。ですから指先にハンディのある方にも簡単にはがすことができますのでとてもいいと思っています。

次は、お年寄りの方がデイサービスやショートステイに出掛けられる際に、バスタオル、パジャマなどいろいろなものを入れたリュックをかついで持ってゆくのは大変だということで、頼まれて作った作品です。これは車イスの後ろに掛けるタイプのものです。外した時にショルダーになります。これも同じ様に指が掛かりやすいような工夫をしてあります。


「似合いますよ」という言葉について

今日は沢山の事をお話しいたしましたが、『似合いますよ』という言葉についてお話しします。
例えば生まれつき視覚障害のある方は、色と光に概念がなく、色のことを説明しましても理解してもらうことは難しいことが多いです。「これは赤よ、花柄よ」と話してもわかってもらえない時に、何が一番信用してもらえるかといいますと『似合いますよ』という言葉です。『すごく似合ってますよ、いいですよ!』とアドバイスすることがとても大事なことだと思います。
流行を追うのではなくて、自分らしい服にすることが大切なことだと思います。『あなたらしいわよ、すごくいいわよ、似合ってるわよ』と話しかけたり、『かっこいいわよ、素敵よ!』という言葉が大事なことだと思います。洋服を着る時に、あるいはお買い物をするときの決め手になる言葉だと思います。

これはフラング(Fringues)というフランスで有名になった本です。私は『服は着る薬』というテーマでこれまで歩んでまいりましたが、「ジョン・ガリアーノ(デザイナー)の服はなぜ健康保険が効かないの」という副題から始まる本です。女性が洋服を買ってストレスを解消するということがよくあります。精神科医にかからなくてもジョン・ガリアーノの服さえ着ていれば自分は大丈夫だというようなことが書かれています。精神的にもカンフル剤として洋服があるとしています。

これからちょっと寒くなりますよね。パジャマや帽子を作った残りの布から作ったものです。これはフリースという生地です。ユニクロやギャップも使っていますので、今ではとてもポピュラーな生地です。フリースの原材料はペットボトルです。ペットボトルで出来ているものは、様々ですので毛玉ができるものは安価なものです。毛玉ができないものを使ってください。
私が連載しているものには必ず製図を載せています。ちょっとしたあまり布で作るものです。マフラーですが、前後二重になっており、中を通して使えるようにしてありますので、はだけることはありません。とても安くできるお洒落です。

これは老人ホームなどで講演するときにお見せすると、欲しいとおっしゃって取られてしまうほど人気があるものです。毛糸ひと桛(かせ)は何百円かで買うことができます。何か空のダンボールの箱があると思いますが、それをある長さに切り取り、ひと桛(かせ)の半分の毛糸をグルグル巻き、外すと輪っかになります。それを首に掛けてねじって使うととっても暖く簡単なマフラーになり、黒いトックリセーターにとても似合うのです。自分が一番好きな色が自分に一番似合う色です。いろいろと心配したり、人に聞かなくても自分の好きな色というのがその人に一番合いますね。自分の好きな色は自分に一番合っている色なのです。霜降りの糸は、編んでしまうとガッカリするのですが、毛糸の輪っかのままですととても個性的なものになります。汚れましたらウール100%ですから、シャンプーで洗ってリンスしてあげると、とても香りもよく、お手入れも簡単で便利です。
老人ホームなどの講演の最後にこのようにお洒落ができますよとお話しをして回覧しますと、かならず誰かのものになってしまいます(笑)。ちょっとした工夫なのですが、男性でも女性でも使うことができます。
よく中尾彬が手ぬぐいのようなものをネックに巻いてねじったものを着用されていますが、同じ様になかなか面白いと思います。工夫すると1000円以内でできるお洒落です。シルクやカシミヤのスカーフも良いのですが、ウールもそうですが、虫が食べます。いいもの程虫が好みます。高いものを買っても気をつけなければなりません。この毛糸はシーズンオフに買いますととても安く買えます。ひと桛(かせ)で2つできますので、お友達と半分づつにしたり、白と黒の毛糸でやってもカッコいいです。野呂さんの毛糸や、ミッソーニの毛糸など色々あります。セーターを編むのもいいのですが、このように毛糸をグルグル巻くだけで楽しむことができます。

取り留めのない話で、お洒落とかけ離れた話もありましたが、これで私の話をおわらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。 (大きな拍手)


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